SVAROG PARADOX 12GA のレシピ【実射編】

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PARADOX 12GA 実射編

実射テストはレミントン純正ハーフライフル銃身

今回はいよいよ実射編のレポートを紹介。この実射テストについてはターハント銃身ではなくレミントン社純正のハーフライフル銃身で行われていることを強調しておきます。

【弾頭鋳造編】【リローディング編】については以下参照。

SVAROG PARADOX 12GA のレシピ【リローディング編】

2019年11月9日

SVAROG PARADOX 12GAのレシピ【弾頭鋳造編】

2019年11月6日

↓↓注意↓↓
※ハンドロードは奥が深く楽しいものですが、危険も伴います。必ず予備知識を得た上で自己責任で行って下さい。


初撃ち

銃はレミントン870・レミントン純正ハーフライフリングバレル・リューポルドVX-1・2-7Ⅹ。
(命中精度を高めるためにいろいろ手を加えています。)

場所は千葉県射撃場50mです。

27gr・29gr・31grの薬量を試した結果です。それぞれ7発ずつ撃ち込んでいます。

使用している的はもちろんカカシ的です。四角の中心を狙って撃っています。

カカシ的作りました 

2019年9月11日

弾頭重量が610grもあるので、かなりのリコイルです。

27grでは散っていますが、29grと31grはCTCで6~7cmとまとまっています。

29、31両薬量は、ほぼ互角の集弾性です。射撃用には29gr、狩猟用には31grで決まり。と思ったのですが、ここであることに気が付きます。

29grは縦に弾痕が並び31grは横に並んでいます。

これは偶然なのでしょうか?

29grが縦で、31grが横なら30grはどうなるのでしょうか?ほかの銃でもこのように一列に並んだ着弾になるのでしょうか?

リロード仲間の友人に協力を仰ぎ、雷管・火薬を除く弾の材料を10発分渡し、教えたレシピで弾を詰めてきてもらいました。


岩本山射撃場にて、30gr弾と別のⅯ870

友人がわざわざ岩本山射撃場に、指示したレシピで作った弾と、Ⅿ870をもって来てくれました。

彼のM870もレミントン純正ハーフライフリング銃身とリューポルドVX-1スコープという偶然にも私のM870と同じ組み合わせです。

左は3発ですが、右は真ん中が3発同痕の5発のグルーピングです。CTCが7cmで安定しています。他の銃でも纏まる弾と証明できました。(残り2発は動的に使いました)

興味深い事に、やはり縦一列に弾痕が並んでいます。また銃が変わっても、弾の集弾性はほぼ同じということがわかりました。

次に、私のⅯ870での30gr弾を5発試してみます。

一番左の一発は自分のミスです。撃つ直前に『あっ左にずれた!』となってしまったやつです。それを考えたら5発・CTC3.5cmとなります。

今度は横一列に並んでいます。直線状に弾着するのは偶然ではないことがわかりました。

着弾に法則があるなら、グルーピングを纏めることも出来るはずです。


火薬量の追い込み

実験・証明したわけではないので憶測になってしまうのですが、火薬量により縦横の向きが変わるので、直線状に弾着するのは、銃身の発射時における銃身のバイブレーションが関係しているのではないかとにらんでいます。

つまりはライフル銃のリローディングのように、火薬量を調整することによって最適な銃身の振動にすることができる、つまりは一番よく纏まるグルーピングを出す事ができるのではないかと考えました。

29grと30grで着弾の弾痕の向きが変わったことに着目し、その中間、29.5grで検証してみました。

千葉県射撃場にて行った検証射撃の結果です。

それぞれ5発ずつのグルーピングです。なんと、全部が3cm台を達成しました。5発3セット、15発撃ったのですが、なんとフライヤーも出ず、驚異的な結果となりました。

写真一枚目と二枚目の狙点を重ねて測ったところ、10発でCTCが4㎝という驚異の結果です。写真3枚目は一番下の弾痕に3発入っています。

着弾も以前のような直線状にはなっていないことがわかります。

私はスラグ弾においては、1grの火薬量は誤差みたいなもので、結果に影響することはないと考えていました。たった0.5grでここまで大きな差が出て驚いています。

これだけシビアな火薬量のコントロールを要求されるということは、例え同じ銘柄の銃でも、製造時期の差、ネジの締め付けトルク等の組み立て方の差、射手の撃ち方の差など、様々な‘差’によって最適な火薬量が異なるということです。

『この銃は当たらない』いう嘆きをよく聞きますが、実際はその銃に最適の装弾と最適な撃ち方を見つけられていないだけと私は思います。現代の工作精度の銃なら、50mでCTC4cmは可能なはずです。


弾頭の鉛の性質の影響、自動銃との相性、火薬量の限界

火薬量の限界

リロード編でも述べましたが、この弾頭、薬莢、ガスシールの組み合わせでは、火薬量はロングショット34grが限界です。それ以上は雷管突破する可能性が高くなります。

30gr(左)と34gr(右)の雷管の膨らみの違いを見てください。34grは擊針の打刻痕が膨らみ、いわゆる「デベソ」になっています。横からみると、底面から飛び出しているのがよくわかります。34grが限界です。


鉛の性質の影響

鉛の性質もよく議論されます。純鉛が良いとか、アンチモンを何パーセント混ぜた硬鉛が良いとか、無限に近い様々な組み合わせがありますが、結論から言うと、この弾頭においては純鉛と硬鉛の集弾の差はありません。

硬鉛3発、純鉛3発の6発、すべて同じ薬量29.5grで、同じ狙点を撃ってみましたが、CTC4cmでした。穴は4つしか空いていませんが、右側2つの穴に2発ずつ入っており、硬鉛、純鉛、着弾は完全に重なっています。写真の他にも、硬鉛と純鉛の弾を撃ち比べてみましたが、それぞれの性能に違いは確認できませんでした。つまりは堤防や海釣場で拾ってきた釣りの錘のようなジャンクでも精度を出せるということです。(しかしながら、極端に成分の偏った鉛合金での結果はわかりません。あくまで「釣の錘」程度の純度の鉛での話です)


自動銃との相性

いままでのテストはすべてM870でしたが、私は狩猟用にレミントン純正ハーフライフリング銃身のM11-87も所持していますので、M11-87でもテストしてみました。ただし、M11-87にはスコープはついておらず、ダットサイトですので、あくまで参考です。

自動銃でもCTC6~7cmくらいには簡単にまとまってくれました。狩猟用のダットサイト照準なので、精密な委託射撃ができないため、火薬量を突き詰めることはしませんが、すでに狩猟用としては十分すぎる精度です。50m先の10cmより小さい獲物をスラグで撃つことなんてありえないからです。


1発あたりのコスト

この火薬量29.5grのスラグ弾一発コストですが、

弾頭0円
スタビライザー15円
ガスシール15円
火薬51円
雷管20円
薬莢0円
合計101円

ガスシールとスタビライザーは送料込の価格です。送料抜きなら、一発90円になります。

1発100円ですが、何倍もする市販の既製装弾より遥かに高性能だといえます。私は去年だけで、1発400円するサボットを1000発は撃ちました。弾代だけで40万円以上出費したわけです。この弾なら10万円弱で済みます。30万も節約できるのです。みなさんもチャレンジしてみてください。

最後に僕から

全部で三回にわたってI川氏のレポートを紹介させてもらったのだけど、まとめていて僕自身も良い刺激をいただきました。
火薬量の違いについては、僕自身も「もう少し検証してみようかな?」という気にさせられる……。

機材を集めてみたものの、イマイチまとまらなくて諦めてしまった人。

興味はあるけど何から始めたらいいかわからない人。

もっとハンドロードをする人が増えて、情報交換が沢山できるようになれば、という願いの元に思い切ってレシピを公開してくれたI川氏。

迷える子羊を一人でも救えたなら、スラッグに打ちのめされた彼の脳みそと財布も浮かばれるんじゃないでしょうか。

最後に貴重なレポートを当ブログに提供してくれたI川氏に感謝。きっと誰かの役に立つと思います。本当にありがとう。また飲もう!