気配って何だろう?

前回の記事での出猟は、獲物の僅かな気配をよく捉えることができた猟だと、自分でも感心しました。

でも気配って何なんでしょうか?

僕はなんだかオカルトチックなものな気がしていて、ブログで使うと一気に胡散臭くなるような気がしていました。でも気配としか表現できないことも多々ありまして。

たまーにシックスセンス的な感じで、何故そこに獲物がいるとわかったのか、自分でも不思議でしょうがないことがよくあります。

でもここ最近、狩猟中の出来事や、罠の見回りの体験などで何となく自論のようなものもできてきたので、今回ちょっと書いてみたいと思ったのです。

Contents

気配を感じているっぽい動画

体験その1

まずは見てほしい動画

これは前猟期の動画で、広葉樹林で待ち伏せをしたときの動画です。

この日は割と風のある日で、忍び猟中に見つけた場所が気になり、陽当たりが良く、周辺が見渡せる位置に座っていました。

ボーッとしているようですが、突然僕が何かに反応しはじめるのがわかると思います。

しばらく待っていると、見ている方向からシカが現れます。マイクにシカの足音が入るのはシカが姿を現す直前くらいです。

風が落ち葉に吹かれてカサカサと音を立てている中、どうやってシカの足音を認識することがてきたのでしょうか?

体験その2

コレは前回のブログ記事になった動画の一つです。

忍び猟中に、左手の谷から何か異変を感じて立ち止まりました。

息を殺して見回しますが、よくわかりません。

しばらく双眼鏡を覗いて違和感の正体を探したのですが、見つけることができず……。

「気のせいか?まぁどうせキョンかな」と思って、再び歩き始めます。

しかし、数歩進んだところで気にして見ていた方向の死角からシカが飛び出してきました。

体験その3

この動画は上のシカを獲って丸ごと背負子に積んで戻っている時の動画です。

少しへばり気味になり、息が上がってる状態ですが、それでも激熱ゾーンを歩いていたので、ときおりSLLSを入れました。

「ヨイショ」と掛け声が思わず漏れた直後、「ハッ!」と発し、息を殺すのがわかるかと思います。

SLLSの直後、しかも移動中で呼吸も荒いなか、何かを感じとったのが見て取れます。

この不可解な行動、感じたものは?これを気配といわずなんと表現するか。

そのあと周りをキョロキョロ見回して、弾の装填を始めていますが、この時には「イノシシが来る……!」という確信を持っていたのを覚えています。

気配について考え出したきっかけ

山慣れしてない人と山に

猟期前に、あまり山慣れしてない職場の後輩(狩猟者ではない)と山中に掛けた罠の見回りに行く機会がありました。

見回り中に林道沿いで痕跡探しをしていたら、車のエンジン音が聞こえた気がして、「車が来るかも〜」と後輩に伝えたのですが、「何言ってんスカ?」みたいな反応で信じやしない。

数分後にうしろから軽バンが現れたのでドヤ顔したのですが、エンジン音がそんなにわかりにくいものだったか疑問に思いました。

また違う日に、別の後輩と山中を歩いていると、キョンがドタドタと足音を立てて(特徴的なのでよくわかります)逃げて行くのが聞こえました。

後輩に、「キョンが居たよ」と言ったのですが、「幻聴でも聴こえてんじゃないの?」と、酷い言われようでした。

同じ場所を、同じように歩いていても、人によってここまで差があるものでしょうか?

ひょっとして二人とも聞こえているのだけど、音として認識できていないのでは?

空気の振動

これも体験談ですが、f-rangeのスタッフである辰本と忍び猟に行ったときのことです。

二人で歩いていて、前を歩いていた僕がオスジカを獲りました。すぐ後ろを歩いていた辰本になぜシカがいたのかとわかったのか聞かれました。

返答に困って「シカが立ち上がったときの空気の振動?が伝わった?」となんだかオカルトじみたことを答えたことがあります。

これは以前にシカの寝屋撃ちで経験したことで、何かが「立ち上がったような気がする」振動を「感じたような気がして」、あたりを見回したら居た、という経験から出た言葉です。

ここ最近の、これらの出来事から、僕が感じた「空気の振動」というのは、脳が音と「認識できなかった音」ではないかな、と思うようになりました。

そして気配というのは、山の中で潜在意識が察知した違和感ではないのかなと。

山中で獲物を求めて徘徊していくうちに、出会ったときの状況が経験として蓄積され、意識せずともその兆候を違和感として感じとれるようになったのではないでしょうか。

それはきっと音だけでなく、例えば風もないのに揺れる灌木の枝葉や、どこからか香ってくるフレッシュな獣臭とあるのでしょう。

僕は目より耳の方がよく利くと自覚しているので、尚更音による兆候を掴みやすいのかもしれません。

と、ここまで書いたところで……。

気配=準静電界?

で結局、気配って何なのだろうとググるとこんな記事が出てきました。

何となく感じる“気配”の正体って何?

掻い摘むと、準静電界という電気の膜が関係しているのでは?という話です。

人や獣や植物は準静電界という微弱な電気の膜に包まれていて、サメやナマズはそれを敏感にキャッチできる。そのサメが持つ器官に似ているは内耳と体毛で、音が聞こえることと電界の変化を検知して気配を感じるのは同様の現象だといえるのかも。ということでした。

なるほど、そう考えたら前述の「空気の振動」という表現もあながち間違いじゃないかもしれませんね。

僕の中でオカルト寄りだった「気配」という言葉がより現実的な物になりました。

なんにせよ、気配というものはまだ未解明な部分が多いものの、存在するということで良いのかもしれませんね。

殺気も説明できそう?

気配と同様に殺気と言う言葉も曖昧だと思っていましたが、これも何となく説明ができそうです。

例えば殺気を放つ状態というのは、「獲物を獲りたい!」という気持ちが先行するあまり、自分が気付かないうちに些細なミスを犯しているのではないでしょうか。

普段より歩くペースが速いとか、呼吸音が大きいとか、音に敏感に反応し過ぎて頭の動きが大きいとか。

そういった些細なミスを獲物が敏感に感じとり、反応しているのかもしれませんね。

僕が撮影したもので、「殺気を感じ取られた」、「気取られた」と思ったのはこちらの動画です。

銃をゆっくり構えたつもりでしたが、据銃動作が速かったのか、動作が大きかったのか、銃を構えた途端にシカがこっちを見ています。

みんなガン見でちょっと気味が悪いですね……。

シカは視力が弱いと聞きますが、動体にはすごく敏感だと思います。特にシカが止まっているときにこちらが動くと気取られやすいです。

この時はおまけにセーフティの解除を忘れてしまいましたが、なんとか獲ることができました。

なかなか難しいとは思いつつも、気持ちが逸るとロクなことがないので、常に正常心でありたいものです。

結論:気配というのは便利な言葉

僕にとって気配や殺気を感じるというのは武道の達人のような人が使うイメージでしたが、意外と身近なものだと思えるようになりました。

その環境に身を置いていれば個人差はあれど備わってくる感覚なのでしょう。知らんけど。

何より便利でいい言葉じゃないですか。気配。

きっと昔の武道を強い人が説明するのが面倒で「気配」って言葉を使いだしたのでしょう。

僕も説明が面倒なので、今後も「気配」という言葉を使っていこうと思います。

先人に感謝。