現地解体のお肉を美味しく食べる

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基本は現地解体

僕が単独忍び猟で獲った獲物は現地解体が基本です。

忍び猟を始めた当初は「毛や泥がつくのは当たり前、洗えば食えるなにものも」という無頓着さでした。実にワイルド。

僕だけが食べるならそれでよかった?のかもしれないですが、家族が食べたり、人にあげる機会もあるし「これじゃダメなのでは?」と考えるように。

ありがたいことに、野生肉に明るい人たちと交流する機会にも恵まれて、自分なりに現地でできる限りの衛生的な解体をする方法を模索し続け、ようやくその方法が確立されてきたように思います。

鹿肉が苦手だった

実は、鹿肉が本っっっ当に苦手で、ここ最近になってようやく美味しいと思えるようになりました。

若い頃近所のお好み焼き屋で食べた鹿のタタキ(まだ大らかな時代)の癖が強くて食べきれなかった経験もあり、元々苦手意識はあったのですが、初めて忍びで獲ったオスジカが不味くてトラウマに……。

不味くなった原因はいくつかあるのですが、

・肉を水で洗う(しかもそのまま冷蔵)

・解体までに時間がかかり過ぎている

・トリミングが不十分

だったからなのかな〜と、いまだと思います。

血抜きに関しては、初めてとはいえ割とよく抜けてたと思うのですが、その後の処理がいただけなかったのかと。

そんな不味いお肉を「はじめて獲ったシカ!命に感謝して全部食べる!」って我慢しながら食べてたもんで、シカの匂いがするとオエっとなるシカセンサーが搭載されました。

高感度すぎて、少しでも鹿の匂いがすると反応して食欲が失せてしまうという困りもの。

ただ「焼いただけ」の鹿肉を食べるのは絶対無理!という感じでした。

そんな僕でしたが、今では鹿の風味を感じつつもステーキで美味しく食べられるまでになったので克服できたと思っています。

今回は試行錯誤しながら辿り着いた処理方法を紹介したいと思います。

※あくまで簡単に手に入るもので、あまりコストもかからず、そこそこ衛生的でそれなりに美味しく食べらるようになった素人の我流の方法です。

現地解体での注意ポイント

毛や土などの異物をつけない

猟師肉あるある、毛だらけ肉。まずはなるべく毛がつかないように解体することを意識します。

いろいろやってみましたが、木などに吊して解体する方法が容易で異物もつきにくいと思います。プーリーとパラコードで吊るすのが一番コンパクトなシステムですが、ガンブレル(鹿ハンガー)はセットも簡単で労力も少ないのであると便利です。

今期は背負子を取りに戻るのが時間的に厳しく、軽量化のために地面で解体する機会が増えたため、吊るしたときと同様に異物の付着を最小限に抑えて解体できるようになってきました。

こうなると好みになってきますが、急斜面で解体するときは吊るすほうが楽なので、臨機応変に使い分けるのが良いかなと。

解体方法についてはまた別の機会に。

まぁどんなに気をつけて解体しても多少は毛がついちゃうこともあります。人間だもの。

そんな時は皮を剥いだあと、肉を切り出す前にアルコールスプレーを吹き掛けて、紙ナプキンや除菌シートで拭き取ってやります。

僕が使ってるアルコールはこれです。

ドーバー酒造のパストリーゼ77は酒造用醸造アルコールと純水を使用した食品に直接噴霧できるアルコール除菌スプレーです。

Twitterで「毛は糞と同じ」と誰かが呟いてたのを見て、ああそうだよなと。ヌタうちもやるし、その辺でお構いなしに寝てるのだもの。そりゃバッチいですよね。

そんなバッチいものつけて数時間でもたてばよろしくない菌も増殖しちゃうはずです。

あとは不注意でお肉を土の上に落としてしまったら諦めるのも大事。払いきれないなら無理して食べない。

ちなみに僕がよくやらかしたのは、解体したお肉を面倒だからとそのまま冷蔵庫に入れて精肉を先延ばしにしたことです。

最近は面倒くさくても、後述する最低限の処理をしてから冷蔵庫に入れています。

肉を吸水シートに包む

現地で切り出した肉はすぐに吸水シートに包んでいます。持ち帰るまでに余計な血も吸ってくれるので、状態が断然良いと思っています。

肉をきれいな状態で保護し、血まで吸ってくれるなんて……。最高です。

ゲームバッグと比べると、使用後は捨てれば良いだけ。滲み出た血液がバッグを汚したりすることもないので余計な気を使わなくて済みます。

ただ、枚数が必要なので嵩張るのと、一枚一枚包んでテープで止めて使うので多少手間がかかります。

僕が使っているのは医療・介護用品のサルバ吸水シートです。ペットシーツも使いましたが、この吸水シートがいまのところ一番使い勝手が良いです。適度に吸水してくれてる感じ。無色、無香料なので、肉に色移りしたり匂いがついたりなんてこともありません。

こんな感じでしっかり吸ってくれます。

まめな手袋交換、ナイフの使い分け・消毒

僕は毛皮を触った手袋で肉を触れることはないように心掛けています。うまくいけば3〜4回交換するだけで済むのですが、なかなかそうもいかないので予備も含めて10双ほど持ち歩いてます。

ナイフは皮剥ぎ用、肉用で最低2本は用意。

いつも持ち歩いてる自作の解体用ナイフ

DIYでナイフを作る〜その1〜

2020年3月20日

DIYでナイフを作る〜その2

2020年5月11日

使用する前にアルコールで除菌し、肉用は部位ごとの作業が終わる毎に全体をアルコール除菌後、除菌シートで拭き取っています。脂の多いイノシシなんかはペーパータオルで一度脂を拭き取ってから除菌してます。

本当は煮沸するのがいいのでしょうけど、湯が沸かせる安定した場所が毎回あるわけではないし、毎度水とガスを持ち歩くのもなかなかしんどいのでこの方法になりました。

作業が終わったら現地でナイフを綺麗に拭きあげるので、シースも汚れず、帰宅後うっかり洗い忘れて悲惨なことになることがなくなったのも安心です。

帰宅後の処理

せっかく現地で苦労して丁寧に持ち帰ったのだからその後の処理も迅速に……、といきたいとこなのだけど、疲れ果ててやる気が起きないこともしばしば。

そんなときは、とりあえずパストリーゼ77をお肉全体に吹きかけて、新しい吸水シートに包んで冷蔵庫にぶち込んでお風呂入ってお酒飲んで寝ます。

やる気があるときは、筋膜などをトリミングしてある程度整えて、アルコールスプレーで除菌したのち、吸水シートに包んでそのままパッキングします。

この吸水シートの良いところはここでもあるんですが、脱気シールがめちゃくちゃしやすくなります。しかも失敗知らず。

このまま解凍すればドリップも吸ってくれますし、一年程度なら問題なく保存できました(個人の感想です)。

ただし!食品用ではないですし、高吸水ポリマーとやらが人体にどのような影響を与えるか不明です。自己責任。

脱気シーラーのみだと冷凍保存中に空気が入ってしまったことがしばしばあったので、ほぼ成功しているこの方法はアリ。

脱気後はなるべく早く冷凍庫に入れるのが良いかなと。3〜4日寝かせてみたりもしましたが、せっかく脱気したのに中で菌を繁殖させてしまってるような気もして。

また、脱気シールしたあとにしばらく置いておくと吸水シートに血液が滲むことがあります。

血抜きに不安があるときは少し寝かせるのですが、もしかして脱気シールでウィープ(ドリップ)が滲み出てるのかも?と思ってみたり。

寝かせるか、すぐに冷凍するか。どちらがいいのかこの辺りは専門的な知識が必要そうですが、自分的には脱気シール後、一晩冷蔵庫で寝かせて冷凍というルールを採用してます。

切り分けた肉だけでなく、鳥も丸のままいけます。

あくまでも素人の処理

冒頭にも書きましたが、簡単に手に入るものであまりコストをかけずにできて、お腹がまだ痛くなったことのない処理方法です。

とはいえ、血まみれ・毛だらけのお肉より絶対美味しくなるし、衛生面でも「多少」は安心なはず。

あなたの獲ったそのお肉、少しの手間と注意を払えば激変するかもしれません。

こうしてみたら食べられなかった鹿肉が食べられるようになったという体験談でした。

まあ、「慣れるほど鹿肉を食べた」という可能性も捨て切れないのですが。