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山梨遠征5日目
楽しい宴を過ごした翌日、銃砲店で銃を受け取りついでに、弾を20発購入。
電話だと新型RBしかないって言われていたのだけど、まだ旧型RBの在庫もあったらしく、10発ずつにしました。
新型RBはまだ撃ったことなくて、猟場で使うのはちょっと心配だったので、これで一安心。
猟場に着いたら正午を回ってたので、まったりと山頂を目指して、歩いてみることに。何故ここまで当たらないのか考えてみました。
思い浮かんだ、当たらない原因
すぐに思い浮かんだのは、バックパックです。そんなに重くないといえど、15kgくらいあります。後ろにかかる荷重に抵抗して身体がいつもより前傾姿勢になってしまいます。
あとは千葉と比べて、ハイペースで歩いていたからか、息切れしてしまうことが多かったです。
終わってみれば、複数の原因が重なってめちゃくちゃだったワケですが、この時は下の2つが大きな原因だと思ってました。
スコープのゼロインが狂ってる?
もう本当これは悪い癖だと思っているんですが、どうしても道具を疑ってしまいます。
念のためスコープサイターで確認してみたら、エレベーションが10クリック程度、下方にズレてました。
事前に射撃場でゼロインも取り直してますし、ぶつけた記憶もないのに…。と首を傾げてたんですが、Twitterで呟いてみたところ、スコープサイターで完全に修正は難しいとの助言をいただきました。完全に同じ位置への取り付けはできないし、ゴミが噛んでるだけで狂うと。
確かに、銃口にテープを巻いたままスコープサイターを除いた時に、かなりズレて見えたことがありました。
なるほどな~と納得して、修正した10クリック分を再び戻そうとした時に、思いだしました。
ぶつけた記憶がないと言いつつも、初日にナイフを落とした時、派手にすっ転んでます。
これは参った…。本来ならここで射撃場でゼロインを取り直すべきでしょうが、明日は最終日。スコープを信じるべきか、スコープサイターを信じるべきか…。
シカにかすった事を考えたら、そんなに大きくズレてる様子でもないようです。
ここは間をとって、5クリックだけ上方に修整してみました。
狙点にこだわりすぎている
今回の遠征で決めていたマイルールがあります。ネックしか狙わない縛りです。
この半矢事件から、もう今期は半矢を作りたくない、バイタルでなく、当たれば即倒するであろうネックを狙おうと決意。
決意したと言いながら、木化けしたシカはネックが狙えずバイタルを狙いましたが…。
確実に死ぬとわかってて逃してしまうのは、狩猟者として心苦しいところです。出来ればなくしたい。
スコープの件は仕方がないとして、ネック狙いは継続です。
この日は頂上付近で4頭に遭遇しましたが、笹藪を走られ、未発砲で終了。体力温存の為、早目の下山にしました。
6日目・最終日
最後の最後でようやく同期と出猟の日ですが、ここまで来ると、やっぱり単独で獲りたい気持ちが強い。待ち合わせの時間を遅めにしてもらい、日の出と共に僕は前日の猟場へ。
同期と出猟、と言っても共猟するわけではなく、近くの山に別々に入るだけなんで結局は単独猟なワケですが。
今回はバックパックは置いて行くことにしました。現地解体せずとも、林道まで下ろせば同期の軽トラに積めますし、待ち合わせに間に合わせるため、早く頂上まで上がらないといけません。ちょっと思うこともあり、尾根を上がらず林道を歩いて頂上まで向かいます。
山頂までの道中、一頭も出会うこともなく頂上まで着きました。ここから尾根を下って、遠征3日目の寝屋を攻めてみます。
尾根上を歩いて下り始めてみたものの、シカの姿は見当たりません。ダメかな~と思い始めた時に、右手の谷からドッと走りだす足音が聞こえました。シカが4頭、うち1頭は子鹿です。20メートル程度の距離を走って行きます。
ただ、異変に気付いて逃げ出した感じで、こちらから40メートルも離れないうちに立ち止まりました。チャンスとばかりに弾を装填、発砲。
外れ。でも、またしても逃げないシカ。
再度装填、発砲、…外れ。
ここでシカが再び走りだしました。
普段(千葉)なら諦めるところですが、ここの猟場でやってみて気づいたのは、シカがそんなに遠くまで逃げないということ。
再び射程圏内に入るかも、と思ったので追いかけてみました。
シカが登った尾根を足跡を頼りに登りきると、警戒しがらも立ち止まっているシカを再び発見。
どうも親鹿が子鹿を気にしているような素振りをしているような気がしました。逃げるけれども、子鹿からそんなに離れないように、気を使っているような…。
子鹿は木に隠れて見えないので、再び親鹿に発砲、1発、2発。また走り出すシカ。
この時ハッとしました。先程の感覚を思い出して銃を構えて確認してみたら、射撃姿勢が自衛官時代の射撃姿勢に戻ってました。
身体から肘が大きく出ないように、脇腹に肘をつけるコンパクトな射撃姿勢です。自衛官の時に何度も何度もやった射撃予習や射撃で身に染み付いたこと。
これが自分の銃でやると、どうも当たらない姿勢。右手の握りが深くなり、余計な力が入るのかガク引きになりやすかったんですね。
今期はオフシーズンにちょっと射撃も力入れてたし、完全に射撃姿勢は修正出来たつもりでいましたが、全く足りてないなと。
これか、当たらない原因は?銃とバックパック背負って山歩いてたら身体が何か思い出したんでしょうか。演習的な何かを。
深呼吸して2、3度据銃して正しい姿勢を確認してみます。
走り出す親鹿に続いて、子鹿が木の影から出てきました。ゆっくりと近付きながら、しっかり射界が確保できる場所を探します。親鹿の後を追い始めた子鹿は、すぐ立ち止まったので、膝撃ちの姿勢に。
弾を装填後、また深呼吸をして、後ろ姿のネックを狙って発砲。
当たった手応え。スコープ越しに子鹿が跳ねるのが見えました。
そのまま子鹿は走って、尾根を越えて行きました。子鹿の足跡を追うと、雪の上に血糊が落ちてました。結構な出血量です。
しばし間を置いて追跡しようと、同期に半矢を追う旨をメッセージで送りました。その後も暫く待ち、呼吸も整ってきたところで追跡開始。
子鹿が登った尾根を越え、斜面をトラバースして少し歩くと、また棒立ちのシカを発見しました。その少し手前の谷に子鹿の姿。足取りが重そうです。この谷を越えられて尾根を上がられた場所は雪が溶けた笹藪です。
逃げ込まれたら、捜すのにかなり苦労してしまいます。
ここで止めたい。
木と木の僅かな隙間から見えた子鹿に発砲。
銃声で走り出したシカの群れを、思わず目で追ってしまいました。6頭居ましたが、はて?子鹿の姿が見えない。仕留めたかと思い血糊を辿って行くと、子鹿が立っていた付近で途切れてます。
でもそこに子鹿の姿はありません。
「?????」
シカの群れが走って行った方へ駆け上がってみましたが、血糊がない。
死角から谷下へ逃げたかと下ってみますが、それらしい足跡も血糊もありません。
様子からすると、そんなに速く移動できるようでもなかったのに、忽然と姿を消してしまいました。
もう一度、足跡を良く観察してみますが、どう見ても谷で神隠しにでもあったかのように消えてます。あるのはゴロゴロと転がった巨大な岩だけ。
岩?いや、まさかな…。
付近の岩の隙間を一つ一つ探してみます。足跡が消えた近くの重なり合った岩の隙間を覗くと目に入る違和感。
こんな状態で岩の隙間に隠れていました。シカがこんな隠れ方をするなんて、僕は今まで見たことも、聞いたこともなかったです。
とにかく、これ以上は逃げられることもないだろうと一安心。
止め刺しをしようと、隙間から引き出そうとしましたが抵抗され、奥へ行こうともがきます。
困った。この状態だと、ナイフを的確に刺す自信はありません。
結局、銃で止め刺すことにし、跳弾が飛んで来ないような角度で、シカの頭が見える位置を探します。
ここなら跳弾も大丈夫だろう。銃を構えてスコープを覗くと、子鹿はあれだけ抵抗していたのに、首をもたげてこちらを見ていました。
スコープ越しに目が合っての止め刺しは今まで経験ありませんでしたが…。自分の心の未熟さを知りました。引き金を引くのを少し躊躇ってしまいました。
獲物が獲れたのに落ち込みながらも、直ぐさま放血に移り同期に連絡します。
「子鹿獲れたぞ、回収頼む。」
「そうか。こっちもお前の助けが必要だ。」
話を聞けば、僕の車の近くの側溝にハマったとか…。1人じゃどうにもならんということで、子鹿は一人で林道近くまで下ろして、一旦下山します。
同期の軽トラは側溝にすっぽりはまって、亀状態。2人でもどうにもなりません。
とりあえず、ハマった軽トラは置いといて、僕の車でシカの回収に戻ります。この時、二人で腹出しをしましたが、同期の手法にちょっと感心。
直腸付近のフンをシゴいて寄せた後、腸を切断するやり方です。ノコギリで骨盤を割るより楽かも。衛生面で不安があれば、念の為、腸を結索してもからでも良さそうです。
シカを回収した後、同期の知人が営むペンションに救助要請。3人がかりで軽トラを持ち上げ、側溝から離脱。
…さて、どうすんべ。
ということで、ここで初めて同期と出猟です。
同期と出猟
山の麓の駐車場に僕の車を止めて、同期の軽トラで今度は対面の山へ行きました。
こちらは2000メートル程。といっても同期がゲートの鍵を持ってあるので林道を車で移動できます。そのまま同期のおすすめポイントへ。
下車して、簡単に説明を受けます。
とりあえず尾根登って、山頂で左へ向かう尾根沿いを歩けと。んー、簡単。
同期は隣の山に入るとのこと。
標高が違うからか、こちらの山の方が雪深いです。しかも膝の少し上くらいまであります。
これはちょっとしんどいぞ…。
しばらく歩いて、山頂付近まで上がったところで、新しそうな足跡を発見。谷を横切っています。このまま登るとまた目的を忘れそうなので、追ってみることにしました。
10分程歩くと、5頭のシカの群れと遭遇。でも微妙に距離が遠いまま、逃げられてしまいました。
更に追って進んでいくと、発砲音が響きました。隣の山からしたようなので同期と判断。
そのままシカの後を追うと、少し平坦になった場所に出ました。その場所で30メートル先を移動するシカを発見。しかし、装填しようとしたところで、また逃げられてしまう。
再び追いかけ始めると、シカが逃げ去った方から、ドタバタと何かがこちらへ向かってきます。
何故かシカの群れがこっちに向かってくる!
立派なツノを持ったオスを先頭に、メスが5、6頭、後に続いているのが見えました。
シカの群れは向きを変える様子もなく、目の前の斜面を下りてきます。
僕の目の前にあった丘が、ちょうど死角になってしまい、シカがどこから出てくるかわからない。
近づいてくる足音、飛び出したのは左側、5メートル。
「近っ!」と思いながらスコープを覗けば、何が映ってるのかさっぱりわからない…。群れを追ってる時に倍率を変えたのをすっかり忘れてしまいました。
止まることなく走り去ろうとする雄鹿。60メートル程離れたところで立ち止まったので2発、矢をかけるも外れ。
これが今回最後の出会いになりました。
後から確認したところ、発砲したのはやっぱり同期。同期の追っていた群れと交差したようで、これはこれで、珍しい経験をしたと思います。
その後下山して、僕は山の麓で子鹿を解体。同期は猟友会の会合へ。
帰り際に再び合流して、同期に借りていた道具を返却して千葉への帰路につきました。
今回の遠征を終えて
雪山は好きかも…
今回初めて、雪山での狩猟を経験したワケですが、忍び猟が非常にしやすいと感じました。葉っぱの上を歩くよりも、足音も消しやすく、雪が音を吸収してくれていると思えました。何よりシカの姿がとても発見しやすいです。
足跡も追いやすいし、血糊を追うのも凄く楽。
デメリットは歩きにくい、それなりの装備が必要ということ。また、雪で地形が隠れてしまうので、移動も注意が必要です。
一番注意したのは、銃口に雪が詰まることです。これは銃口にビニールテープを貼って保護しました。
Twitterで指サックが良いと見かけたので、千葉に帰ってやってみましたが、これ良いですね。
ビニールテープだと冷えて粘着力が弱まるのか、貼りにくいことがありましたが、これなら被せるだけで済みます。
千葉と山梨のシカの違い
今回の遠征で、初めてシカの木化けというか、棒立ちを見たのですが、千葉のシカが棒立ちしないわけではなく、してても見えないということなんだろうなと。
また、山梨のシカは立ち止まることが度々あったのですが、これも同様かもしれません。
僕が鹿場と呼んでいる猟場と今回行った場所を比べてみましたが、鹿場の山は山頂部分を切り取ったような地形をしてます。
シカも止まっていることは止まっているのだろうけど、その頃には視界の外ということなのでしょう。
シカの好む場所、というのは千葉も山梨も変わりはないようです。ただ、積雪していたからなのかはわかりませんが、山梨では南側の陽の当たる斜面での出会いがほとんどでした。
初年度の山梨と比べて
狩猟登録した年の山梨と比べて、忍び猟での歩き方、獲物の見つけ方というのは、自分ではかなり成長したと思います。
初年度の遠征は、最終日まで獲物を間近で見ることもできませんでしたから。
今回痛感したのは射撃の腕。いくつか外した要因はあるものの、修正できたと思っていた射撃姿勢が全然ダメだったこと。
実は同期も似たようなスランプになってるらしく、昨年30頭以上獲ったのに今期は1頭だとか。二人の結論はひたすら練習しかないなと。
子鹿もネックを狙ったのに右太腿に着弾してました。半矢になるべくしないようにと、ネックにこだわったのに、全然意味がない。
狙って行った場所の獲物を、狙った場所に弾が当たって、初めて獲ったという気持ちになれると思います。だから今回も「獲れた」ですね…。
今期はもう一度、山梨に行ってみるつもりですが、それまでに今一度、射撃姿勢を見直してみようと思います。
総じて是正すべき点ばかり浮き彫りになりましたが、得るものも多い遠征になりました。