弾頭の非鉛化に挑戦

Contents

環境省が鉛弾禁止の検討を始める


先日、環境省がシカやイノシシなどの狩猟で鉛弾の使用を全国的に禁止する検討を始めると発表しましたね。狩猟クラスタの皆さんがどう考えているのか気になるところでした。
ハイキングハンティング.txtのリロ氏が実施したアンケート結果からだと概ね肯定的な意見が多いみたい。



僕は射撃場での使用が禁止されなければ特に問題ないと考えている。非鉛弾での射撃はコストが馬鹿にならない。それこそ射撃場で練習しくくなってしまうし、競技としてやり続けられるのは財力のある人に限られてしまう。ハンターの射撃技術低下を招きかねない。

一方で、北海道においていつまでもなくならない野生動物の鉛弾の誤食による鉛中毒は、本土から行くハンターが持ち込んでいる可能性が否めないし、全国的な禁止もやむを得ないかなぁと。もしハンターじゃなければ、鉛弾禁止に大賛成してたと思う。

今回上がっているのは「狩猟で」という話だし、非鉛弾化に取り組むのはやぶさかではないのです。


非鉛弾使うには銃が……

でも今ある銃に問題が。

M870はハーフライフル銃身の導入と銅サボットの運用で活路は見出せるが、MSS-20は非鉛弾化で要らない子になってしまう。

僕のMSS-20はライフルドチョークを使えばサボット弾が撃てるということらしいけど、グルーピングはどうも期待できそうにないし……。

あと5年経てば狩猟でライフルが使えるようになるのだし、今更新しいボルト式のハーフライフル銃を買うのもちょっとなぁという感じ。

突然お気に入りの鉄砲を手放す可能性が出てきたので、対策を練らないと。

幸いにもリロード機材は手元にあるし、僕の場合一番手っ取り早いのは弾頭の材質を非鉛化すること。

ということで、今回はホワイトメタルを使った弾頭の鋳造に挑戦してみましたよ。


ホワイトメタル弾頭の鋳造

ホワイトメタルとは


ホワイトメタルはポンプ等の軸受けに使われる合金らしく、JISでは成分によって11種類にわけられている。数字が大きくなると鉛やヒ素の含有量が増えるが、そのうち2種までは錫、銅、アンチモンでできているようだ。ただし、規格として0.5%以下の鉛は不純物として許容されているので、100%非鉛弾かと問われると「う~んごにょごにょ……」という感じ。
なぜホワイトメタルにしたかというと、単純に錫より安かったから。
まぁ、いざとなったら錫に切り替えるとして、今回は自作非鉛弾頭に猟で使えるだけの精度と威力が期待できるかわかればいい。


いざ鋳造、その前に

ついでに鉛の弾頭も在庫がなくなったので鋳造。特に数えながら作ったわけではないのだが、ちょうど100個できた。何か良いことあるかと期待したけど、逆に運を使った気がして考えるのをやめた。



鉛を使い切ったところで、ひっくり返して残りの鉛や酸化膜のカスを取り除く。入念に手入れしたけど、どうしても多少は鉛が残る。本格的に非鉛弾頭を作るのならメルティングポットは専用なのが欲しい。


鋳造開始

溶かす中身が変わっただけでやることは変わらない、ハズ。熱くなったポットにホワイトメタルチップを投入。ホワイトメタルの融点は220°~240°と、鉛の融点より100°低いそうだけど、鈍感な僕には違いが感じられなかった。


完全に溶けたところで作業開始。

モールドに流し込むと、鉛よりさらっとしているように感じた。完全に固まるまで鉛より時間がかかる。表面が固まったからと、すぐにひっくり返すと中身がベチャっと潰れること数回。


でも湯境は鉛よりはできにくくて、見た目だけなら鉛よりも簡単にキレイに作れるかな。

肝心の型離れなのだけど……ふんぬうううう!!!!!とやってもなかなかピンが外れない。ピンをコネコネ×100回くらいしてやっと抜けた。

2,3個作ったところでヘトヘト。それでも頑張って作っていたら徐々に型離れしやすくなってきた。

「コツをつかんできたかな?」と思ったけど、10個ほど作ったところで明らかに型抜けがよくなったので、これは何かが違うと気付く。

ホワイトメタル2種の成分はアンチモンが8%~10%、銅が5~6%入っている。しっかり攪拌できていないから型抜けのバラツキがでているのかも。弾頭重量にも差がでてきそうなので、やり直し。

しっかりかき混ぜてホワイトメタルをモールドに注ぐ。固い……けど、最初よりは楽に抜けた。

同じ調子で10個程度作ってみてもそんなに型抜けに違いはないので作業を続ける。1㎏のホワイトメタルから40個作ることができた。

左が鉛で右がホワイトメタル

弾頭一つの重量が253gr、16.4g程度の重さになるから、300g程が天使の取り分になる。
これはポット内のホワイトメタルが使い切れないのと、嵩が減ると鋳込速度が遅くなるからか、うまく形成されないので仕方がない。

仕方ないけど、今度やるときは2kgで溶かそうと財布に誓った。


ホワイトメタル弾頭を作ってみた感想

錫に比べてコストは安いが……

正直言うと、二度と作りたくない……。とにかく型離れしにくい。やり直し含めて80個も作ってないはずだけど、ピンをコネコネしすぎてクラックが入ったり曲がったりしてモールドもボロボロ。

羽根の部分にうっすらとクラックが……。南無。


おまけに治りかけていた腱鞘炎も再発。つらい。

ベビーパウダーはもちろん、シリコンスプレーも試したけどそんなに違いも感じられず。

あとは弾職人の大先輩からお薦めいただいたテフロンパウダーを試してみるしかない。

50グラム/ 1.76オンスウルトラファイン超微粒子1.6ミクロンテフロン(登録商標)PTFEパウダーラボ・ケミカルズ
HATCHMATIC

リンク画像だけ見ると怪しさ満点。

アンチモンで型離れがしにくくなっていると思うので、いっそ錫にしてしまえば良いのかもしれない。というか次は錫にしよう。そのくらい作りたくない。


弾頭コストは大体90円

今回使用したホワイトメタル2種のチップは、1kgで2980円+送料500円で3480円だったので、弾頭一個あたり3480円÷40個=87円。どんぶり勘定で90円。
これに火薬、雷管、ワッズ、ハードカードなんか足しても一発200円いかないので、市販のスラッグと同じくらいだろうか。サボット1発に比べれば安いもの。


気になるグルーピングとストッピングパワー

あとはグルーピングとストッピングパワーがどんなものかということ。ストッピングパワーを試すためにはグルーピングがそこそこよくないと使う気にもならないので、しっかり検証したいと思う。
鉛弾頭より約100gr軽くなっているのが、どれだけ影響でるのかちょっと楽しみ。
50mで鉛と遜色ないグルーピングになれば、僕の猟スタイルなら問題なく使えるとは思うのだけど。

久し振りに弾作りでワクワクしている。