狩猟をやってる人にとって、ナイフは切っても切れない存在じゃないでしょうか(切る道具だけど……)。
とりあえず銃と弾とナイフさえあれば忍び猟はできると思ってます。
そしてナイフなしで猟は考えられないです。
そんな大事な存在のはずのナイフなんですが、僕はなかなか興味が持てなくて。
猟をするのでナイフの数は一般家庭よりも多いはずですが、お気に入りの一本というのは特になし。
敢えて選ぶなら、何も気にせずガシガシつかえるモーラナイフです。
安いし。
お小遣いがショートした友人から、お高いナイフを格安で譲ってもらったこともありますが、自分で使うのが勿体なくて結局使わず数年経って転売、MSS-20の購入資金になった、というなんとも微妙なエピソードもあります。
しかも2本。
よく切れるナイフを見た時には「すごい!」と感動もしますし、カッコいいナイフを見れば心も躍るのですが、なぜか自制が利いてしまうという。
しょっちゅう他の物は衝動買いしているのにナイフは計画的。
Twitterでナイフで盛り上がったりしているのを見て、よくわからない僕からすると羨ましく思うことがしばしばありました。それでも興味が湧かないし、ナイフ用語も覚えられなくてモヤモヤ。
そんな僕がナイフ作りに挑戦することに。
きっかけは以前このブログにSVAROGのレシピを提供してくれた友人、I川氏。
彼の作ったナイフがめちゃくちゃ切れると、一緒に猟へ出た葡萄農家の猟友がベタ褒め。
ナイフの自作っていつかはやってみたいと思ってはいたけれど、なんかハードルが高そうじゃないですか。
どこか夢物語のような気がして尻込みしていたのですが、ちょうど使っていた皮剥ぎ包丁が長く感じて買い換えを考えていたところでして。ここらでナイフ作成にチャレンジしてみるのもアリなんじゃないかと。
そして作ることでナイフに興味を持つことができるんじゃないか?という期待。
必要なことは調べるし、少なくとも最低限の用語くらいは覚えられそうな気がしなくもないじゃないですか。
脊椎反射的にI川氏にナイフを作りを教えてもらえないかと尋ねてしまいましたが、二つ返事でOK。
こうして運良く身近な人を師匠として、僕のナイフ作りが始まりました。
Contents
DIYでナイフを自作してみる
I川氏のナイフ教室はLINEを使った通信講座で進められました。通信空手ならぬ通信ナイフ講座。質問もリアルタイムでできちゃう。良い時代。
ナイフ作りはいろいろやり方あると思いますが、今回はこんな感じで作りました。ド素人でも鋼材から紙くらいは切れるナイフは一応作ることができたので、こういうやり方もあるんだね〜くらいの気持ちで見て下さい。
ナイフを作るのに追加した道具
今回のナイフを作りにあたり、次に挙げる工具を導入しました。
ベルトサンダー
ベルトサンダーの幅は様々ですが、初心者は細めの方が使いやすいとのこと。幅広だと削れる面は大きいですが、それだけ抵抗がかかるので家庭用の出力だと結局作業時間がかかってしまうそうな。
使ってみた感想としては大正解の選択だったと思う。ステンレスもゴリゴリ削れます。
ルーター
ドレメルのルーターは壊れたRYOBIの替わりくらいのつもりでしたが、回転数は細かく調整できるし、握りやすいしでお気に入りです。
切削ボックス
そしてDIYで作った、対粉塵用箱形兵器「切削ボックス」。これがないと部屋の中でベルトサンダーなんて使えません。家から追い出されてしまいます。
大事。
まずはデザインを考える
今回は「スキナー」と「骨スキ兼用止め刺し」の2本を作ることにしました。
スキナーについては一からデザインを考えました。
「このくらいの大きさで、このくらいのカーブなら使い易そうかな?」と漠然としたイメージで作成。今猟期も使っていた皮剥ぎ包丁がちょっと長くて使い難かったのでそのあたりを考慮した長さにしました。
骨スキ兼用止め刺しナイフは、前猟期から使っている正広別作の骨スキ包丁を参考に。使い勝手はなんの不満もない包丁ですが、止め刺しに使うのには短いし薄いので心許ないです。あと、ハンドル材が木製のため衛生上ちょっと不安だったのもあります。
そして、今回僕がデザインする上で一番悩んだのは、両刃or片刃です。
両刃
- 片刃と比べて刃が潰れず、刃こぼれしにくい。
- 利き腕を選ばない。
- まっすぐ切りやすい。
片刃
- 両刃と比べて刃先を鋭くしやすい。
- 両刃と比べて研ぎやすい。
- 削ったり、削ぎ落としたりしやすい。
ぶっちゃけ好みみたいなところもあるようですが、両刃は汎用型、片刃は特化型というような印象を受けました。
ブッシュクラフトとかオールマイティに使うなら両刃が相性良いのかな。今回はそれぞれ用途が決まっているので、片刃で良さそうな気もします。切れ味も欲しいし、初めて作るナイフです。より簡単な方が失敗も少なそう。
というわけで、2本とも片刃に決定。
紙にデザインを描いて、段ボールに貼り付けて握ってみて確かめます。
ちょっと小二男子っぽさありますが馬鹿にすることなかれ。結構大事な作業だと思いました。実際に作ってみたところ、スキナーの最初のデザインはどうもしっくりこない。
結局、けがき直前でスキナーは上のデザイン変更しました。あのまま作っていたら、とても使い難いナイフになっていたと思います。
鋼材を決める
デザインが決まれば鋼材選びです。とはいえ今回は使いたい鋼材は決まっていたので、鋼材ありきのデザイン作成でした。鋼材には片刃向けのモノと両刃向け(三層構造とか)のモノもあるので、先にデザインとしましたが、まぁそのあたりは臨機応変にどうぞ。
今回僕が使ったのはZDP-189という鋼材です。
日立金属が開発した粉末鋼合金鋼で、高硬度・粘り・耐磨耗性・耐腐食性
に優れた刃物用鋼材。とにかく硬くて切れ味長持ちするそう。
I川氏のこだわりナイフもZDP-189製。加工に不安はありましたが、「どうせ素人が作るんだもの、鋼材が良かろうが悪かろうが仕上がりはアレなんだから良い鋼材使っちゃおう!」というノリで無謀にも最高硬度クラスの鋼材に挑むことに。
鋼材にけがきをする
デザインが決まり、鋼材が届いたら型紙を元にけがいていきます。油性マジックでざっくりと描いてもいいですが、こんなときでもないと使う機会もないだろうからと「青ニス」を買ってみました。
机上でも使いやすいようにと筆タイプにしたのですが、ドバドバと出てきて難しい……。
けがきも我ながら雑。
鋼材を切り出していく
けがきに沿ってドリルで穴をあける
けがきから2〜3ミリほど外側をドリルで穴をあけていきます。ドリルの刃が焼けないように、卓上ボール盤の速度は最低まで落として毎度切削用の油をつけてあげます。あける穴が多いほど次の工程が楽になります。
慌てずゆっくりあけていくのが大事。
ルーターで切り込みを入れる
ボール盤であけた穴をルーターで繋げるように切り込みを入れていきます。最後まで切断しなくても1/3〜3/4程度切り込んで、「ほぁた!」とプラスチックハンマーでぶん殴ればパキンといきます。
ルーターの刃を滑らせて傷つけないように注意。
ナイフの形に削っていく
ベルトサンダーでアウトラインを削る
ベルトサンダーでアウトラインの外側を1mm程残すように削っていきます。
意外とゴリゴリ削れて楽しいです。
ハンドル部に穴をあける
ハンドル部にハンドル材固定用のボルトを通す穴をあけます。僕は何も考えずにその場であけちゃいましたが、穴の位置も含めてデザインしたほうが良さそうです。
※このブログを書いていた時点ですでにナイフは完成していますが、結論から言うと失敗。穴径のサイズと位置はよく考えてあけたほうがいいです。
木材とナイフを固定する
適当な木材を用意してナイフを固定します。このとき、木材のツラとブレードが平行になるように注意します。
僕は部屋に2x4建材が転がっていたのでコレを使いましたが、I川氏は海に拾いに行ってました。エコです。
ベベルとアウトラインを削る
鋼材をアウトラインに沿って木材ごと削ります。
慎重に角度調節しながらベベルも削ります。このとき一気に削りすぎないように注意。ゴリゴリ押し当てたら削り痕がなかなか消せなくて大変でした。
木材をガイドにすることで素人でも正確に削ることができます。
ベベルを削り終えたら、アウトラインを全体的に整えます。
熱処理に出す
ここまで来たら、いよいよ熱処理に出します。
焼きが入ると傷を消すのも一苦労と聞いたので、この段階である程度磨いておきました。
熱処理を依頼するとき、依頼先によって決まり(刃の厚みとか)があるのでよく確認しときます。
だいたい熱処理から戻ってくるまで1週間〜2週間程度かかるようです。
型を紙にトレースしておいてハンドルのデザインでも考えながら待つと良いよとのこと。
なるほどと納得して、言われたとおり型をトレースしておいたのですが、その紙で他のナイフの試し切りしてしまって結局ぶっつけという……。
後半の〜その2〜へ続きます。