Contents
前回までの流れ
思いつきとノリで始まった僕のナイフ作り。〜その1〜ではナイフを焼きに入れに出すところで終わりました。
焼き入れに出してるあいだにハンドルのデザインしようとしたのですが、ナイフの形状をトレースした紙を試し切りに使う失態を犯したおかげで、ナイフが戻ってくるのをただ首を長くして待っているだけという。
熱処理から返ってきたナイフ
熱処理に出してたナイフが返ってきました。どこに出すか迷ったのですが、カイデックスやハンドル材でもお世話になった、「Matrix-AIDA」さんでお願いしました。
今回掛かった費用はナイフの熱処理×2と送料で3000円。封筒にナイフと一緒に払込標が入ってて、後払いでスムーズなお取引。
熱処理から返ってきたZDP-189鋼材には曇ったような酸化皮膜が薄くついてます。
I川師匠曰くこの皮膜がめちゃんこ錆を呼ぶそうなので、すぐ落としにかかりました。ピカールとかの研磨剤でゴシゴシと擦れば落ちる程度なのでまだ楽ちん。
ハンドル材を切り出す
ハンドル材をナイフのハンドルに合わせて切り出します。
今回のハンドル材はキャンバス・マイカルタとX-gripという材質を選びました。
マイカルタ
マイカルタとは、米国のウエスチングハウス社の開発により、現在はインターナショナル・ペーパー社で製造されている製品で、登録商標ですので同社以外の製品はマイカルタではありません。相当品は別メーカーの同等品です。キャンバス(綿布)、リネン(麻布)、合板、紙等を核とし、主としてフェノール樹脂で固められているもので、化学プラントの歯車やパイピング、電機産業の絶縁体等に使用されています。
ナイフのハンドル材としても優秀な素材で、堅牢性、耐水性、加工性すべてに優れた素材で、長年にわたってナイフメーカーに支持されています。
X-grip
X-Gripはフェノール樹脂を原料とする高性能の新素材です。
模様もフィーリングも各色で異なります。機械加工性はバターを加工するかのように簡単で、カスタムナイフやモデルガンのハンドルやインレイ素材として最適です。X-Gripは信じられないほど頑丈であるにもかかわらず、非常に美しいミラーフィニッシュに仕上がります。
キャンバス・マイカルタは、以前バークリバーのナイフを解体で使わせて貰ったことがあってそのときに握りやすい印象だったこと、X-gripはなんか高級感が出そうな感じだったので、違ったテイストのモノを作るという意味ではありかと思ったので選びました。
キャンバス・マイカルタはアウトレットにあった厚みが通常の2倍のもの。これ半裁にしたらお得!って買ったんですけど、半裁にするのがめっちゃ大変でした。最初はディスクグラインダー使って切断したんですが、思いの外手こずる上に断面がキレイにならず……。
手持ちの糸鋸でシコシコ切るのがキレイな断面で早かったというオチ。
ハンドル材に穴をあける
ハンドル材を留める方法はいくつかあるようですが、今回はファスニングボルトを使って固定する方法でやってみようと思ったのです。
なんとか切り出したハンドル材に穴をあけます。やり直しが利かないので慎重に……。
まぁ、やらかしちゃったわけですが。
焼き入れ前に適当に穴を開けてそのままだったので、ファスニングボルトが通りません(穴径3.5mm、ボルト径4mm)。
ダメ元で穴をドリルで広げてみようと試みますが、全然刃がたたない。
さすがZDP-189!つよい!
こんなヘマでこの鋼材の硬さを知るハメになるとは。
X-gripのほうはどうしてもこのニューボルトとやらを使いたかったので、ホームセンターで長ネジを買ってきて加工することにしました。
ルーターに切断砥石をつけてチュイーンと切断。
切断した長ネジを卓上ドリル盤にネジ山が潰れない程度に挟んで回転させ、サンドペーパーを当てて調整しながらゴリゴリやります。
ネジ穴を通って、かつ空回りしない程度に山を残すことに成功。なんとかリカバリーできた感じになりました。
一方、マイカルタの方は失敗に失敗を重ねた感じで無残なことに。
ハンドル材にタップを立てて3mmボルトで直接固定するつもりでしたが、ボーッとして3.5mmであけちゃいました。もう笑うしかない。
結局穴を拡張後、ナットを埋め込んでパテで固定してなんとか形にはしました。
さて、ようやくハンドル材をナイフに固定することができました。ここから削っていきます。普通はここで考えたデザインを基に削っていくんでしょうけど、ぶっつけ本番で削りました。ザ・無計画。
手に合わせて削りたかったので、あれこれ考えるより現物合わせで削るほうが早いかなぁと思ったわけです。
というわけでニギニギして様子を見ながら削っていきます。
スキナーは二通りの持ち方を想定してそれに合わせて。
止め刺し兼骨スキは自分が握ってしっくりする感じで合わせました。
ナイフに刃をつける
ハンドルもついてナイフらしくなってきたところでいよいよ刃をつけていきます。まずはスキナーから。
スキナーは結構攻めた感じで削っていたので、最初から砥石で研いでいきます。砥石はシャプトン刃の黒幕#1000と仕上げ砥石#5000です。
ずーりずーりと研いでいると、ふと気付きました。なんか研ぎ方がわかる?
今回ナイフを作ってみるまでは漠然とやってる感じで、切れるからまぁ研げてるって感じだったんですが、刃を見て研ぎが甘い箇所とかがわかるようになりました。
わかる、わかるぞ!という感じでリアルにムスカ状態。
いつも使う包丁を研いでみてもあきらかに切れ味が変わったんです。今までどれだけ適当に研いでいたのかを痛感しました。お恥ずかしい。
研いだナイフでこんなことできたのは初めてです。
一方で止め刺し兼骨スキのほうは刃厚があったので安物ダイヤモンド刃物研ぎ機である程度研いでやりました。こやつ、安物のくせになかなかやりおる。
水研ぎ機と迷ったんですが、周囲にそこそこ水が飛び散って割と惨事になると聞いて、妻に叱られる未来しか見えなかったのでこちらにしました。
作業机で使えるし、削り粉もそんなに舞わないし、選択としては正解だったかも。
で、砥石で研ぎ出して気付いたんですが、こちらは若干刃が反っていたようです。片刃は焼き入れしたときに反りやすいというような話を聞いていましたし、スキナーに比べて鋼材も薄いので仕方ないのかも。
万力に挟んで修正を考えたのですが、ポキッとやってしまいそうで断念。
刺して肉が切れるくらいの鋭さはあるので良しとします。
シースを作る
完成が見えてきたところでシースを作りへ。今回は両方ともカイデックスを使用しました。
超音波カッターでカイデックスを切り出していきます。超音波カッター用のマットが無いので、机を傷つけないように浮かして切っていたのですが、試しにハンドロードで使っているアルミ板で代用してみたら使えなくもない感じ。
ナイフを養生テープなどで保護します。切り出したカイデックスをオーブンレンジで温めて、厚手のスポンジと木の板でナイフを挟み全体重でプレス。冷めるまでしばらく待ってから仕上がりの確認。
ハトメやボルトの穴をあけて、ナイフの抜き差しがしやすいようにヒートガンで微調整して、ルーターで面取りをしてシースの完成。
ナイフの完成
とまぁ、紆余曲折ありましたが、無事人生初のナイフが完成しました。
手作り感で溢れてますが、これは……愛着湧きますよ。早く狩猟で使ってみたいですね〜。
それまで無意味にベーコンとか切って待ちます。
今回ナイフを作り終えてみての感想ですが、一言で言うと「思ったより簡単」でした。
道具がある程度揃っていればですが。
始めてみるまではナイフ作りとか職人とかじゃないと無理では?と思ってましたが、全然そんなことないです。ただ切るだけのナイフなら誰でも作れると思います。
でも、キレイに作るっていうのが本当に難しい……。カスタムナイフメーカーの皆さんよくあんなにキレイに仕上げるなぁと感心しかないです。
自分も納得のいくナイフを作ってみたいという気になりました。
作ってみたい形状のナイフがいくつかあるんですよ。
せっかく道具も揃えたことですし、しばらくナイフ作りを研究してみたいと思っています。
今回はところどころ失敗もしてるし、写真も全然足りてませんが、ナイフ作りって意外と簡単っていうことと、めっちゃ楽しいということが伝われば嬉しいな。
【番外編】NGOナイフショーの話
このナイフ達を作成してた頃に、あるカスタムナイフメーカーさんの工房へお邪魔させていただく機会がありました。そのナイフメーカーさんは
NEMOTOKNIVESさんです。
NEMOTOKNIVESさんは、超カッコイイナイフばっかり作ってらっしゃるカスタムナイフメーカーさんです。本当、超カッコイイの(語彙力)
知るきっかけになったのは自衛隊関係からでしたが、ナイフのこと全く興味の無かった僕ですらその造形が強烈に印象に残ってて、唯一覚えていたメーカーさんです。
ブドウ農家の猟友に軽いノリ誘われて行ってみたら、ガッツリ工房まで見せていただいて。お忙しい中貴重なお話を聞かせていただきました。
いや、ナイフ作り始めて間もないのに、こんな大御所さんのところへ手土産もなしにお邪魔して、ほんと恐縮です。どさくさに紛れて焼き上がった自分のナイフ見てもらったりして感想いただいたりでウキウキなひととき。
でも僕以上に喜んでいたのが我がナイフの師匠、I川氏。
NEMOTOKNIVESさんに10代の頃から憧れていたらしく、終始少年のように目を輝かせていました。
彼の作品も根本さんに見ていただいて、根本さんが主催する「SAKURA-BLADESHOW」というナイフショーに出せたらいいね〜なんて話をしてたのです。
「カスタムナイフメーカーになるのが夢だった」と興奮冷めやらぬまま語るI川氏に、「応援するよ!俺もいつか一緒に出展できるように頑張る!」なんて帰りの車内で話していました。
ところが、新型コロナウイルス感染症の影響で今年の「SAKURA-BLADESHOW」と「大阪ナイフショー」が中止に。
その替わりとして、
家に居ながらにして楽しめる、全く新しいナイフショー!
Never Go Outside!(外に出ない!!!)の精神で楽しもう!
というコンセプトの元、「NGO KNIFE SHOW」がオンラインで開催されることになりました。
こちらのナイフショーにお誘いをいただき、急遽I川氏のデビューが決まったのです。
お話をいただいたときに開催1週間前というタイトなスケジュールでしたが、NEMOTOKNIVESさんを訪問したことによりナイフ製作に一層熱がこもっていたI川氏、手元に3本の作品が完成しており、追加を怒濤の勢いで3本製作、合計6本で参加となりました。
とはいえ、カツカツなスケジュール。メーカー名はナイフショー当日の未明に決定するというドタバタ劇でした。
そして遂にカスタムナイフメーカー、「威風史郎」爆誕。
いつもお世話になってる友人のため何かできることをということで、SNS苦手なI川氏に代わり、代理出展という形で僕も参加させていただきました。
二日間に渡り開催された「NGO KNIFE SHOW」。
オンラインナイフショーという初の試みの中、ナイフ制作者も、代理人である僕にとって初のナイフショー。
ハッシュタグを付けてツイートするアピール方法くらいしかわからず、売れるかどうか心配でしたが、無事2本の売り上げと1本のオーダーメイドを戴くことができました。ありがたいことです。
来年目標の予定がだいぶ早まりましたが、威風史郎のデビューをお手伝いできて僕も嬉しい限りです。
まだまだ粗削りな点もあると思いますが、暖かい目で見守っていただけたらと思います。
威風史郎は近々WEBショップもオープン予定だそうなので、またその際はTwitterなり、ブログなりでご紹介させていただきます。
最後になりましたが「NGO KNIFE SHOW」の主催者様、参加された皆様、いいね・RT等、ご協力を戴いた皆様、本当にありがとうございました。
僕自身もとてもいい経験になりました。
次はリアルナイフショーでお会いしましょう!